社会福祉法人に会計はなぜ必要?
会計には、お金をどのように準備し、準備したお金をどのように利用したかを報告する役割があります。
社会福祉法人の経営には、介護保険料や税金を財源とした公金が投入されています。
そのためどのようにお金が使われたかの報告が厳密に求められるのです。
社会福祉法人会計の目的とは?
社会福祉法人会計の目的は、
➀資金収支の内容を明らかにする
➁財政状態を明らかにする
➂純資産の増減を明らかにする、という3つの目的があります。
そして各々の目的を達成するために、ⅰ資金収支計算書・ⅱ貸借対照表・ⅲ事業活動計算書という3つの決算書を作成します。
➀資金収支の内容を明らかにする ➡ ⅰ資金収支計算書
➁財政状態を明らかにする ➡ ⅱ貸借対照表
➂純資産の増減を明らかにする ➡ ⅲ事業活動計算書
これらの決算書は社会福祉法人の成績表となります。
成績表を分析することで、法人経営に問題がないかどうかを知ることができるようになります。
この決算書ですが、社会福祉法人においては、1年に1回(期首4月1日~期末3月31日)決算書をつくるルールとなっています。
決算書は何を教えてくれるの?
3つの決算書はそれぞれ役割が異なります。
ⅰ資金収支計算書は、事業で入ってきたお金がいくらか、出ていったお金がいくらかを教えてくます。
ⅱ貸借対照表は、財産がいくらあるかを教えてくれます。
ⅲ事業活動計算書は、事業にお金がいくらかかったか、事業で得たお金で賄えたのか、足りなかったのかを教えてくれます。
ⅰ資金収支計算書 ➡ 事業で入ってきたお金がいくらか、出ていったお金がいくらか
ⅱ貸借対照表 ➡ 財産がいくらあるか
ⅲ事業活動計算書 ➡ 事業にお金がいくらかかったか、事業で得たお金で賄えたのか、足りなかったのか
資金収支計算書の支出・収入・収支差額とは?
資金収支計算書では、資金収支を明らかにするために
「収入」「支出」「収支差額」にわけて記録を行います。
収入は、いくらお金が入ったかを表し、支出とは、いくらお金を支払ったかを表します。そして収支差額とは、収入と支出の差額を表します。
収入=いくらお金が入ったか
支出=いくらお金を支払ったか
収支差額=収入と支出の差額(収入-支出)
収支差額は、収入から支出を差し引いて求めます。
そのため、収支差額がプラスの場合には、お金が増え、収支差額がマイナスの場合には、お金が減ります。
注意点としては、収入・支出には今後の入金や出金の見込みも含まれているということです。
したがって収支差額も今後の見込みを表します。
収支差額がプラス ➡ お金が増加
収支差額がマイナス ➡ お金が減少
資金収支計算書のイメージ!
ここからは、数値を用いながら、資金収支計算書の理解を深めて頂きたいと思います。
社会福祉法人は、事業年度開始前に事業計画をたて、この計画に基づき、資金収支予算を作成することとなっています。
例えば、収入は500、支出は390を目標とした場合には下表のような資金収支予算が出来上がります。収支差額は110となりますね。
予算 | 実績 | 差異 | |
収 入 支 出 |
500 390 |
||
収支差額 | 110 |
資金収支予算はあくまでも計画であるため、実際に発生する金額(実績)とはズレが生じてしまうことがあります。
収入の実績が500、支出の実績が400であるとすると下表のような資金収支実績となります。
予算 | 実績 | 差異 | |
収 入 支 出 |
500 390 |
500 400 |
0 △10 |
収支差額 | 110 | 100 | 10 |
大切なのは、差異の欄です。差異とは予算と実績の「ズレ」のことです。予算では支出は390だったのに、実績は400で、予測していたよりも、10多くお金がでていってしまっています。予算オーバーしてしまったのには適切な理由があるかどうかをしっかり検討する必要があります。経費に無駄がなかったか?予算が厳しすぎなかったか?など原因を探るようにしましょう。
貸借対照表のイメージ!
貸借対照表は、社会福祉法人の財産状態を教えてくれます。貸借対照表は財産を➀資産➁負債➂純資産に分けて表示します。➀資産とは、増えたら嬉しいプラスの財産のことを言います。増えたら嬉しい財産の代表は現金ですが、現金以外にも、建物・土地・車両・備品・権利なども資産に該当します。➁負債とは、増えたら嫌なマイナスの財産です。設備購入のための借入金や、介護用品の未払金など負債に該当します。➂純資産とは、資産から負債を差し引いた差額のことです。
資産 ➡ 増えたら嬉しいプラスの財産
負債 ➡ 増えたら嫌なマイナスの財産
純資産 ➡ 資産と負債の差額
純資産が馴染みにくいかもしれませんが、純資産は社会福祉法人の純粋な価値と考えましょう。
実際に数値を使いながら貸借対照表を見ていきたいと思います。
貸借対照表は前年度末と比較してよくなっているかどうかが重要となります。
当年度末のみの財産を見ているだけでは良くなっているのか、悪くなっているのかはわかりません。
例えば、前年度末の資産が1,050、負債が290、純資産が760だったとすると次のような貸借対照表が作成されます。
当年度末 | 前年度末 | 増減 | 当年度末 | 前年度末 | 増減 | ||
資産 | 1,050 | 負 債 純資産 |
290 760 |
||||
資産計 | 1,050 | 負債純資産計 | 1,050 |
次に当年度末の資産が1,100、負債が300、純資産が800だったとすると次のような貸借対照表が更新されます。
当年度末 | 前年度末 | 増減 | 当年度末 | 前年度末 | 増減 | ||
資産 | 1,100 | 1,050 | 50 | 負 債 純資産 |
300 800 |
290 760 |
10 40 |
資産計 | 1,100 | 1,050 | 50 | 負債純資産計 | 1,100 | 1,050 | 50 |
ここで注目してもらいたいのは、増減欄です。
この社会福祉法人では、マイナスの財産である負債が10増加していますが、一方でプラスの財産である資産が50も増加しています。
その結果、純資産が40増加しており、これは法人の価値が40増加したということを表しています。
より詳細な検討をするのであれば、どういった種類の資産が、なぜ増えたかについても分析するべきです。
コメント